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サファリ

またまた、すごいドキュメンタリー映画が出てきました。
アフリカでおこなわれるトロフィー・ハンティングを描き出す『サファリ』。

トロフィー・ハンティングとは、動物の毛皮や剥製を得るために野生動物を狩る行為。スポーツやレジャーといった要素が強いようです。

もちろん、趣味・娯楽として動物を殺すことに対して批判があります。

この映画はトロフィー・ハンティング批判のナレーションなどは入れず、表面上は否定的な立場をとることなく、ひたすらハンターのインタビューやハンティングの様子を映していることに徹底しているのですが、明らかに皮肉めいた不穏な空気感で進行していきます。

この映画を特徴づけるインタビュー映像

最も特徴的なのは、この作品のインタビュー映像は必ず水平垂直が寸分狂っていない真正面からの画にしているところ。
まったくカメラを傾けていないんですね。

そうするとどういう効果があるかというと、まるでそのインタビューシーンを一つの額縁に入れて、それだけでひとつの作品にしているような感じがします。

壁にかけられた剥製もふくめ対象者を正面から捉えている。
ただ正面からなにも演出を加えていないよ、という顔をしながら「ほら、この人のこと、じっくり見ろよ〜」とか「こんな変なこと言ってるんだよ〜」という皮肉めいた無言の演出になっています。

最初のうちこそ、トロフィー・ハンティングなんかやる人たちは、ちょっとおかしいよなとか、自分勝手な意見ばかり言ってるなと感じるのですが、そのうちハンティング施設のオーナーのインタビューでは、人間の存在・あり方についてハッとさせられる発言があったりなど色々なことを考えさせられるのです。

キリンの解体を見たことありますか?

この映画で衝撃的だったのは、キリンのハンティング。
ヌーとかシマウマなら想定の範囲内なんですが、なんと彼らは、キリンなんかも射止めてしまいます。射止めたことに対して、本人達は口々に感動を表現して記念撮影した後、大きな体と長い首を無理矢理トラックの荷台に押し込めて解体所まで運搬。現地の黒人たちの手により皮を剥がされていきます。その様をカメラはずっと捉えています。

もちろんヌーならよくてキリンはNGということではないのですが、我々日本人からするとキリンの解体なんて衝撃的なわけで…。
スクリーンの前でただただ唖然とするばかり…なのです。

そしてカメラは現地の人たちにも

この映画に登場するハンターはドイツやオーストリアの白人たち。
このハンターたちが現地アフリカに落としていくお金がけっこうな額になるらしい。

この趣味的ハンティングがアフリカを潤しているという側面がある。

ハンターが仕留めた動物を解体するのは現地の黒人たち。ナイフを手に数人がかりで皮を剥ぎ、腹を割いていきます。

カメラはこの現地の人たちにも多くフォーカスしていきます。
解体シーンを捉え続けるのはもちろん、前述の額縁カットの対象にもなります。現地の人にはインタビューすることなく無言のままカメラの前に立たせるのです。剥製たちと一緒に。

こうなると、見てる側は制作側の意図を想像して、無言で立っているだけの現地の人の台詞を勝手に作っていっちゃうんですね。
「白人たちはお金を落としていってくれればいいんだ。食べるためなので私たちは何にも思っていないヨ」とか…。
映画では何も語っていないのに、見る側が勝手に語ってしまうという、おそろしい作りになってます。

とんでもない映画です…。


監督はオーストリア人のウルリヒ・ザイドル。
この監督の映画は初めて観たのですが、いやはや要注意な監督です。

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