ちくま文庫、アンナ・カヴァン『氷』のこの装丁、
いいですよねー。大好きです。
この装丁のせいで、ずっと前から印象に残っていたので読んでみました。
『氷』とはどんな内容なのか?
原因は書かれていないが、氷河期なのか、世界が終わろうとしている
戦争状態である。しかし、そんなことにはかまわずに“私”は、あるアルビノの“少女”を追いかけ続ける。
そんな内容の物語なんですが…。
この作品はとにかく、かわっている。
普通の小説の方法論で書かれていると思って読み始めたら、まず読めたものではない。
「この本は“変”ですよ〜」
「ちょっととっつきづらいですよ〜」
という事前情報と、
「あ〜、読んでてよくわからんけど、こういう本だから仕方ないよね〜」
というあたたかい気持ちをもって読まないとだめな本なのです。
めんどくさい人とつきあう心構えのようですが…
しかし、この世界観に慣れてくるとすごく引き込まれるんこと請け合いです。
正面から向き合わない。しかし正解!なデザイン
そんな世界観を表現するにはぴったりのデザインだと思います。
変に氷の冷たさをビジュアル化したようなデザインだったりして
正面から勝負するよりは正解じゃないかと。
アンナ・カヴァンの世界にまともに正面から向き合うのは違うと思うんですよね。
このデザインは、そんなアンナ・カヴァンの世界に対して、まともに相手をしてないけど、ふさわしくて、美しくて、印象に残る。
装丁家が意図しているかどうかはわかりませんが、
キャンバス上に単に黒い四角を塗っただけの
カジミール・マレーヴィチの絵画『黒の正方形』を連想してしまいます。
どちらも、あこがれる、
うらやましい仕事ぶりです。
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