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『パターソン』
“詩”のある日常

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ジム・ジャームッシュ監督の新作映画『パターソン』が公開されています。
前作『オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ』以来4年ぶりの新作。
待ちに待ったというファンも多かったのではないでしょうか?

これぞ、ジム・ジャームッシュ!

実際、客層も50歳代が多くて、若い頃に流行った『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を観て以来大好きで、「今日はジム・ジャームッシュだから久しぶりに映画館に来たよ〜!」といったファンが多かった(勝手な想像ですが…)ようです。

映画のできは、そのファンの期待を裏切らない素晴らしい内容でした。

前作『オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ』もかなりいい完成度だったのですが、なにしろ主人公がバンパイア(!)という設定のせいか、できのよさの割には“思い入れ”のわかない映画だったように感じたものです。

しかし、今作はそんな心配はまったくなし。

日常感の中にちょっとズレた、いわゆるオフビートな感覚がいっぱい味わえる、いかにもジム・ジャームッシュらしい仕上がり。

古くからの彼のファンが満足したのはもちろん、そうでない人もいい気分になって映画館を出たのではないでしょうか。

長編詩『パターソン』から着想

この映画は、ニュージャージー州にあるパターソンという街のパターソンという名前の主人公の1週間を描いた物語。この主人公パターソンは、バスの運転手なのですが詩の創作をライフワークとしているという設定。

実際にパターソン出身の詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの長編詩『パターソン』から着想を得ています。

そう聞くと、そのウィリアムズの『パターソン』を読んでみたくなるじゃないですか…。
しかも、劇中、日本からやってきた詩人役の永瀬正敏が長編詩『パターソン』の翻訳本を手にしてます。
これは買わねばといかん!と思ったのですが、パンフレットによるとこの本は、あくまで小道具であって実際に出版されているものではないとのこと…。

(映画で使用されたものとは別の書籍ならあるようですが…)

“詩”のある日常

“何も起こらない何気ない日常を描いた映画(実際はちょっとした事件は起きるのですが…)”という表現もされるこの作品ですが、その日常は“詩”とともにあります。

主人公パターソンは、
バスの運行開始を待つ間、運転席でノートに詩を書き溜めている。
街角で出会った女の子と詩の話しをする。
街角で練習をするラッパーの紡ぎ出す言葉に、聞き入ってしまう。
といった素晴らしいシーンの連続が日常なのです。

考えてみると、現実の世界の自分の身の回りで常に詩を詠んでいる人がいるとしたら、ちょっと引いてしまうかもしれませんし、変わったヤツ扱いされるでしょう。
それが、こんなにもいい感じの映画になる。この映画は“何気ない日常”なんかではない、生き方の問題をジム・ジャームッシュは描いているんですね。

公式サイトにある著名人のコメントページにある作家の町田康氏のコメントが、まさにこれを表していると思うので以下に引用しておきます。

詩とはなにかということを、この映画を観てやっと知りました。夢のように過ぎ、泡のように消えていく日々の生活のなかで私たちは、毎日、真っ白なノートを贈られているのだと知りました。

このコメントの意味は、作品を観るとさらによく分かるようになるのですが、個人的にこのページ内で白眉のコメントでした。

 

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