先日、イランの映画監督キアロスタミを追ったドキュメンタリー映画『キアロスタミの世界』を鑑賞しました。その中で監督がインタビューに答えており、とても印象的な言葉がありました。
「嘘で真実を伝えているんだ」
ここでいう嘘とは、演出されたフィクション映像のこと。
ドキュメント映像と演出された映像を入り交え何層にも入れ子構造になった複雑な作品をつくる監督ならではの表現で、観ていてニヤリとさせられた、まさにキアロスタミらしいコメントでした。
真実を伝えるためにカメラを向けても、その時点で被写体が撮られていることを意識しないはずはなく、その時点で完全な演出なし状態になるはずもないのです。また、素のドキュメント映像そのままで、相手に伝わるなら制作側も苦労しないでしょう。さまざまな工夫をほどこしてこそ相手に伝わることがあるのだと思います。
考えてみると、ぼくたち販促・広告、WEBの制作でも同じことが言えるなあと思ったのです。(訴求したい)真実を伝えるために、デザインや言葉、写真撮影と画像加工など、虚構をつくっていく…。
この虚構が”真実を伝えるため”ではなく、虚構のまま終わると一気に陳腐なものになっていくのでしょうね。
※写真はキアロスタミが撮影した風景写真のポストカード